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ICTをものともしない文法訳読偏重
2016年 4月 04日(月曜日) 00:00

とどめといいながら、まだまだありました。くどいようですが紹介します。専門家と呼ばれている先生方でも今後の英語教育の提言として、



ICT機器を含めた教育環境の充実(中略)などが必要不可欠です。


と言います。ICTというのは、最近の教育界では本当によく耳にする言葉です。Information, Communication & Technologyの略です。簡単に言えば、PCや電子黒板等の、デジタル機機器のことです。私が勤める地域では、全公立高校に20台以上の「簡易電子黒板」が導入されました。


キャスターがついた鉄製のボックスの中にノートPCとプロジェクターが入っています。黒板に磁石で張り付けるタイプのスクリーンがあり、そこにPCの映像を写すというものです。スクリーンとPCを接続しておくと、スクリーン上から操作ができます。これで何をするかというと、なんてことはない、パワー・ポイントのスライドを使った授業をする程度です。


この機器が導入されたときには、全教員が必ず年3回研修を受けなければなりませんでした。まず最初に見せられたのは、この機器を販売している業者のデモビデオです。英語の授業でしたので、細かく覚えています。


ある私立の進学校の授業でした。電子黒板にはぎっしりと入試の長文問題の本文が映し出されています。先生が説明しながらクリックすると、本文の周りに、単語の日本語訳、文法項目(「仮定法過去」「目的語」)、また四角や丸や斜線(スラッシュ)等の記号、二重線、波線等バリエーション豊かな下線が現れてきます。マウスカーソルで示しながら「ここはちゃんと赤線を引いておいてね」など先生は言っています。(もちろん日本語です。)生徒は英語を使うどころか、ノートに写すので精いっぱいなのです。


先生はインタビューでこう答えていました。「以前は、黒板にびっしり書いて、黒板がうまったら消して、それだけで相当時間をロスしていました。この機器を導入してからは、事前に一度準備しておけば何回もすぐに教室で使えるので、時間が有効に活用できます。」生徒は、「黒板よりも見やすいし、わかりやすくて、ノートに正確に写せるようになりました。」


この授業でICT機器を導入する必要があるのでしょうか。プリントにして配布すれば十分です。東京で教員をしている知り合いから教えてもらったのですが、東京都教育委員会は、先生が作ったICT教材(パワーポイントのスライド)を公表しています。ICT教材コンテストのようなものも行っているようです。英語の教材を見てみました。「英語Ⅰ」の教材の学習内容を見てみましょう。


「不定詞」「受動態(基礎)」「受動態(応用)」「受動態(発展)」「不定詞(応用)」「不定詞(発展)」「分詞」「分詞構文」「分詞(総合問題)」「仮定法過去」


Information, Communication and Technologyと言いながら、やっていることは明治時代の100年以上前から続く「英文法」の授業です。日本人の英語教師の手にかかると、ICTまでもが「英文法のお勉強になってしまうのです。


以上、中学・高校の英語の授業がどれほど文法偏重であるかという実例をご紹介しました専門家と呼ばれている先生方で言われている、「コミュニケーション重視の教育がここ20年行われてきた」という前提も、そのまま信じるわけにはいかないということがおわかりいただけたかと思います。


新学習指導要領の「英語の授業は英語で」という方針が打ち出される背景には、いくら言ってもなかなか動かない現場に対する文科省のいら立ちがあるのかもしれません。新学習指導要領の本当の狙いは、コミュニケーション重視を「さらに」すすめるというよりも、「文法詰め込み」で先生が一方的に教えるばかりの授業はもういいから、英語を「言葉」として授業の中で使ってくれ、という当たり前の要請ではないでしょうか。