英語には敬語がないというのは誤解です。確かに日本語の尊敬語や丁寧語のような敬語の仕組みや決まった単語はありません。その代りに、丁寧な表現を用いて相手に敬意を表します。特にビジネスパーソンでは日本語同様、敬語が大切です。
私は社会人になるまで英語の敬語表現をあまり意識していませんでした。幼少時からインターナショナルスクールに通っていたこともあり、日常的に英語を話していました。そして、英語に丁寧な表現があることに気づいたのは、投資銀行のJPモルガンのアジア支部(東京とシンガポール)で働き始めたからでした。
英語も敬語を使うことで職場の人間関係がよくなりますし、気持ちがいいものです。仕事もスムーズに進むようになります。取引先であればなおさらです。実際、私の経験でも仕事ができる人、優秀なビジネスパーソンは英語の文章がシンプルで丁寧な表現を使うことができ、相手への敬意が感じられます。
英語の敬語表現といっても、難しく考えなくても大丈夫です。例えば、kindlyという単語の一言に相手の思いが気づくことがあります。メールで「明日までに」という急ぎの要件に対する申し訳ないという気持ちです。そういう気遣い、心配りがkindlyからは感じ取れるはずです。
kindlyもそうですが、Can you~?ではなく、Would you please~?と表現するなど、シンプルな言葉の選択と組み合わせで良いのです。いわゆる中学レベルの英語で十分丁寧な表現が可能になります。
英語の敬語は調節がポイントになるので、その調整方法をご紹介します。例えば、日本語の「~していただけませんか?」と同じように言うつもりで、「Won't you~?」を使います。これは日本人がミスしやすい典型例です。
この場合、「~してくれないのか?」と相手を責めたり、圧力をかけるようなニュアンスになってしまいます。日本語の発想をそのまま英語にすると間違いやすくなるので注意が必要です。「Can't you~?」も同じことが言えます。
そして、「Please~(してください)」と丁寧に述べているつもりですが、英語では一方的で少し命令調の印象を与えることがあります。また、文章の内容が相手に他のオプションや余裕を与えていないのもマイナス点です。
また、人に何かを頼む時は、「Would you please~?」のようなリクエスト形式を使うと丁寧な表現になります。「Are you free~?」に比べ丁寧な文章ですが、答えがイエスかノーだけで、相手に余裕を与えていない感じがします。
以上の問題点を改善したのがクッション言葉です、クッション言葉とは、日本語の前置きと同じようなもので、「恐れ入りますが」や「お手数をおかけしますが」などに相当します。ここでは最初に会議などの目的を説明することで、時間を割いてもらうことへの申し訳なさを示し、気遣いを表しています。
他に単語の格上げという調整もあります。単語の格上げとは、日本語で「見る」を「拝見する」や「ご覧になる」など敬語を使うのと同じだと考えてください。同じ意味の単語でも、丁寧でスマートな単語があります。単語そのものに敬意は含まれていませんが、そうした単語を使うことで丁寧な文章になるのです。
英語にも敬語表現があることを理解していただけましたでしょうか。
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