[倒産危険度コラム]オンライン英会話救済案の落とし穴 上場企業のオンライン英会話、レアジョブとDMM英会話 |
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実際に半分まで落ち込んだレアジョブ、ベネッセ(ベルリッツ)、ニチイ学館(Gaba、COCO塾)の株価は、今後どのような再建シナリオがあるのか。 2016年秋ごろが一つの節目というのは、銀行、経産省などの関係者の一致した見方だ。 まず、慢性的なキャッシュ不足を補うために、今後も多くの教室閉鎖や統合を迫られるだろう。また、銀行側が支援条件としている下期の営業黒字の達成の成否もポイントだ。そして、「2020年の東京オリンピックには、多くの日本人の語学力が必要だ」(経産省・五輪相幹部)と、大義名分の下、そこに公的資金を注ぐスキームが検討されている。 しかし、すでに大手英会話スクール救済を懸念する声も上がっている。実は主要ターミナル駅周辺に教室を置くグループレッスン主体のビジネスモデルは、いくらカネを注いでも、新たに生徒が来なければ大赤字になる。その課題を解消できた大手英会話スクールは今のところ一つもない。 さらに、「政府やNOVA救済時のG-COMのような他業種の企業支援を受ければ、外資系企業との踏み込んだ提携や交渉は難しくなる」とイーオン関係者。このままでは英会話スクール自体が東京オリンピック前の税金投入により安易な延命策になりかねない。 2007年のNOVA破綻と翌年のリーマンショック以降、大手英会話スクールはいっせいに新規教室のオープンにブレーキをかけたが、オンライン英会話勢はその後も積極的に生徒募集をかけ続けた。レアジョブやDMM英会話が集中的に生徒募集したことでここにきてフィリピン側の講師が不足し、大量の生徒がレッスンを受けられないのだ。それを今ごろになって、契約期間を延長したいとか言い始めてシャレにならない」とこの関係者は続ける。 ただでさえ生徒不足にさらされている語学教育業界や英会話スクールの経営者にとって、レアジョブやDMM英会話の営業不振は、頭の痛い問題だ。現在、レアジョブでは経営難を乗り切るため上場したりするなど資金集めに奔走しており、取引の多寡に応じて出資を要請して回っている。 新たにオンライン英会話事業に進出した経営者の中には、もともと数十人しか講師がいなかったのに、リーマンショック後にレアジョブやDMM英会話の営業を真に受け、投資を大幅に増やし生徒獲得に乗り出したスクールもある。ただ、この数年を見ると100校できたオンライン英会話の98校はサイトを閉鎖するなどして撤退している。 理屈の上では、オンライン英会話は契約期間が制限されていないため、市況に左右されにくい。だが、これ以上多くのオンライン英会話が誕生するとさらなる競争激化が考えられ、サイトが急に閉鎖されるなど生徒の被害は甚大なものになる。 関係者の間では、オペレーターリスクと呼ばれていて、すでにそのリスクは顕在化している。仮にレアジョブやDMMが倒産すれば、他のオンライン英会話や駅前にある英会話スクールへの影響は、「2007年のNOVAの比ではない」と口をそろえる。 新規生徒数減少のあおりを受け、大手英会話スクールの中には、銀行からリスケジュール(借り入れ条件の変更)を受けているところもある。苦しい懐事情の中、支援要請に応じている場合ではないというのが本音だ。しかし、大手英会話スクールやオンライン大手のレアジョブやDMM英会話が破綻すれば連鎖倒産リスクにさらされる。背に腹は代えられないという苦しい選択を迫られている。
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