消費しない日本人が増えている 英会話スクールに通う人の減少が意味するもの |
英会話料金比較表 - 英会話料金比較表 | |||
2017年 9月 07日(木曜日) 00:00 | |||
総務省は2017年上半期分の家計調査を発表しました。いくつか注目すべき変化が見られます。同時に、短期循環的ではなく、より構造的な変化も見られ、消費関連業界は、こうした変化に対応できるかどうかが、大きな分かれ目になりそうです。 まず、実質消費水準は、いまだ低下傾向を脱していません。2015年を100とした指数で97.8と、2015年8月を最後に、以来ずっと100を下回り、しかも低下基調にあります。実質消費水準は月平均比ゼロ成長となっています。 この消費の弱さの背景として、所得の減少傾向があります。年金の実質減額は制度的に決められているだけに逃げようがありませんが、これに加えて、勤労者世帯の所得も実質減少が続いています。 次に、消費内訳に注目すべき動きが見られます。実質消費全体は前年比1.4%の減少ですが、減少に大きく寄与した費目をみると、語学教育サービス、私立大学、専修学校などの授業料が押し下げました。 このうち、語学教育サービスには3つの構造的な変化が起きています。 1つは、高齢者の海外旅行離れが増える中で、英会話スクールには通わない高齢者が増えていることです。2つ目は、若い人の大手英会話スクール離れが進んでいることです。先日あるテレビ番組で、若い女性が「大手の英会話スクールに通うことはダサい」と発言していました。 実際、大手英会話スクールは若者が出会いを求めて通っていた時代がありましたが、現代の若い人には冗談としか思えないそうです。英会話レッスンはグループレッスンではなく、必要な時にマンツーマンレッスンを利用すればよい、という若者も増えています。 所得制約ばかりか、高額商品やサービスを所有したいという価値観がなくなったようです。注目すべき第3の動きとして、シェアリング・エコノミーの傾向が進んでいることが挙げられます。車に始まって、シェア・ルームも増えています。 昔は、使わなくても権利を所有していることの喜びが重視され、その無駄、余裕分が、物的生産を増やす要因になっていました。しかし、所有意欲が減退し、必要な時にシェアする時代になると、効率化は進みますが生産は落ちるわけです。 次に、英会話スクールに通う人の減少が消費の足を引っ張っていますが、これは実質減少でレッスン料金が安くなって消費が減ったわけではありません。むしろ大手英会話スクールでは、今年10%前後値上げされたところが多くなっています。 その中でこれが大きく減ったのは生徒数です。レッスン料金については少子化の影響で、子ども向け英会話教室に生徒が集まらないことにも表れています。 一方、語学教育サービス全体の消費が不振な中でも増加傾向のものもあります。増加費目をみると、マンツーマンレッスンが全体を押し上げています。このうち目立つのは、毎回払い制のスクールが増加している点です。 消費全体を見ると、このところずっと消費を押し上げているのがスマホなど移動電話通信料の増加です。特に若年層ではスマホの費用が増大し、これがその他の消費を圧迫している面も否めません。かといってスマホを使用するのを止めるわけにいかず、結果として他の分野で所有する贅沢を捨て、必要な時に借りたりシェアしたりする生活パターンが増えているようです。 高齢化の進行で、高齢世帯の将来不安が消費の節約を促し、消費全体の伸びを抑えていますが、少子化の影響や若年世帯の消費行動の変化も、消費構造の変化に大きな影響を与えている可能性があることを、今回の家計調査は示唆しています。 英会話スクールの低需要は一時的でなく、構造的に弱さが続く可能性があるため、シェアリングなど新しいレッスン形態を考える必要があります。子ども向け英会話教室のみならず、これから少子化による需要減退は様々な形で現れてくるはずです。 スマホの拡大に伴い、通信費の増大が大きく、ある意味ではこれがその他の消費を圧迫します。日本の通信費は海外に比べてかなり高く、消費全体に占める通信費の割合が他の国に比べてかなり高くなっています。 それだけ税金に近い圧迫要因であり、今後この分野での規制緩和、競争促進がなされて価格の引き下げ圧力が強まる可能性があります。関連業界もそれに対する備え、対応が必要になると思われます。 レッスン場所は、教室からカフェやオンラインにシフトし、消費のパターンはモノの所有型消費から体験型消費にシフトしています。そして所得、年金が増えなくなっているだけに、レッスン料金に敏感な消費者が増え、値上げが需要減退につながりやすくなっています。 これらの流れや変化に乗りそこなったスクールは苦戦しますが、流れを掴んで成功するスクールも少なくありません。
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