言語獲得のプロセスや脳の働きを調べる研究は、何をどうすれば日本人がより効率的に英語を学ぶことができるのか、という英語学習のノウハウに繋がっています。
ただ、それはこの方法を実践すればだれでもできるようになるというようなお手軽メソッドではないののです。
まず、現在の英語力がどのくらいで、どのレベルにまで持って行きたいのか。さらに全ての人に共通した学習法があるのではなく、オーダーメイドの学習法が必要になります。現時点での英語力にバラつきが大きく、動機も目的もさまざまなビジネスパーソンの場合、特にそれが言えると思うのです。
英語のスキルアップというのは例えるとスポーツに似ています。なぜなら、まず前提として英語のルールを知り、基本動作を覚えていなければいけないからです。その上で目標に向けてトレーニングを重ね、実践で練習します。
弱点を見つければそこを克服し、必要なスキルを強化し、さらに高いレベルを目指していくのです。ルールは文法、そして基本動作は語彙や発音です。日本の多くのビジネスパーソンは大学受験までに文法や語彙は身に付けていますが、リスニングやリーディングのトレーニングや実践での練習ができない人が多くいます。
また、人によって英語で商談ができるようになりたいのか、報告書が書けるようになりたいのか、メールのやり取りができればいいのかなど目指すところも違います。それぞれに取り組むべきメニューが違うのです。
効率的に英語力全般の底上げを図りたいなら、まずは読む・聞くの能力向上から取り組むべきでしょう。読んでも理解できない内容の文章を自分で書くことはできないですし、聞くことができれば相手が言っていることから語彙やフレーズを学んでいくこともできるようになるのです。
そして、何よりも大切なことは継続することです。脳は常に新しい情報を取り込んでいますが、一方で使っていない情報はどんどん消去してしまいます。母語でさえ3年以上も使わずにいれば徐々に喪失が始まります。
毎日できれば1時間、無理なら30分でも英語に触れてみましょう。適切なトレーニングをコツコツ積み上げていけば、ビジネスや日常生活に困らない程度には十分にスキルアップは可能なのです。
母語は聞く→話す→読む→聞くの順番に獲得しますが、認知能力が発達した段階から習得する第二言語は読む→聞く→話す→書く(インプット→アウトプット)の順番で学習するのが効率的なのです。
いずれのスキルも正しい文法の知識と十分な語彙力がベースとなります。特に文法は日本語と英語で根本的に構造が違うため、嫌でも完璧にしておかないと上達は見込めないのです。必須なのは中学・高校で習う基本の20項目です。
最後に、帰国子女を対象とした調査では、帰国して英語を使わない環境になると半年で例外なく英語が口から出てこなくなるというようになります。幼少時から英語に接し高いレベルで英語を身に付けている帰国子女でさえそうなのです。
言語レベルの維持には、起きている時間の20%が必要であり、平均睡眠時間から計算すると約3時間半にもなります。英語学習者は細切れでもいいのでせめて1日1時間は英語に接する時間を持ちたいものです。
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