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メディカル系英会話スクールCOCO塾、ニチイ学館の戦略
経営力で分析優良?ダメ!!英会話スクールの研究
2015年 11月 13日(金曜日) 00:00

マンツーマンレッスンに特化したもうひとつのスクール・Gabaマンツーマン英会話・ニチイ学館は、約100億円でGaba買収後、経営の舵を大きく切った。2012年からテレビCMを大量に打ち出して、全国の主要都市に開校したCOCO塾は、それを象徴する出来事である。


俳優の伊勢谷友介が出演したCMが一時期よく流れ、景気が良さそうに見えていた。同社は介護業界、医療事務受託ともに最大手だが、劣悪な労働環境や悪質な賃金抑制から「ブラック企業」と目されている。

同社の事業の多角化について、介護部門の社員は次のように話す。「COCO塾などのサイドビジネスに多額の投資をしているが、現状では投資額を回収できていない。そのため、本業の介護事業を支えている社員たちの待遇も全くといっていいほど変わらない」。


ニチイ学館(東京都、斉藤正俊社長)は、教育事業を「経営の長期安定に向けた戦略投資」と位置付けながらも事業の育成に苦戦しているようだ。 今期に始めた英会話教室「COCO塾」が不振で、純利益はマイナスとなった。

都内で開いた2012年4~9月期の決算説明会で、斉藤社長は教育事業が足を引っ張ったと悔やんだ。理由はCOCO塾の不振。教室の開校の遅れや知名度の低さで受講生が計画を大幅に下回ったと説明した。


GABAの子会社化で売上高は増加したものの、同部門の営業損益は19億円の赤字。COCO塾で21億円の赤字を出したのが響いた。講師となる外国人の人員確保と、効果的な広告戦略展開の2つに失敗し、出鼻をくじかれた。

同社の14年3月期の連結決算は、売上高が前期比2%増の2714億円、純利益は同35%減の28億円。COCO塾の3月末時点の会員数が目標の6000人に届かなかったことが、減益に影響したとみられている。


目標未達成のしわ寄せは社員に及んでいる。ある月の給与明細にCOCO塾の勧誘広告が挟まれていたというのだ。「年収200万円程度では、高い月謝を支払う余裕がない。我々は常日頃からお客様には配慮しているが、社員に対する会社の配慮のなさには腹が立つ」と同社社員。


経営安定を狙う大企業が、英会話スクールのサイドビジネスを手がけるケースは過去にもあった。巨大資本であるDMM.comグループが2013年2月よりオンライン英会話市場に参入している。DMM.comグループは、動画サービスやFX、そしてゲームに加えて、さらには電子書籍、ソーラーパネル、3Dプリントまで多岐にわたる事業領域でコングロマリットにサービスを展開しており、既に700万人を超えるユーザーを保有しているネットビジネス業界でも有数の大企業だ。


だが、スクールの財政基盤を、純ビジネス路線に求めたのはニチイ学館が先である。新スクール開校のための資金調達も、なかなかユニークである。ニチイ学館が入居しているテナントビルにそのままCOCO塾を開校し、介護事務の日本人スタッフを英会話のスタッフにさせる。買収したGabaのノウハウと営業力を借金返済に充てるという。


ニチイ学館は、1968年に寺田明彦会長が個人で行った医療事務受託事業で創業。現在では介護サービス、医療事務受託の各事業で最大手であり、教育事業も、医療事務員やホームヘルパー(訪問介護員)などの医療・ヘルスケア分野の人材育成講座を主体としており、中核事業と密接につながる。講座を通じて育成した人材を医療事務受託先の医療機関に紹介するほか、同社の介護職員として受け入れるなど、自前で人材を創出・確保するビジネスモデルによって、順調な事業の拡大につなげてきた。

しかし、介護サービス、医療事務受託の両事業に次ぐ3本目の新たな収益事業に位置付け、本格参入に手を染めた英会話事業については、両事業との関連性はまったくない。この点は株主や市場関係者らに対する説得性は乏しく、主力事業を蝕む新規事業は不評を買った。

さらにCOCO塾事業は、多額な広告宣伝費と、急速なペースで進める全国への事業展開という初期投資が響き、四半期決算ごとに赤字額が積み上がり、闇雲に突き進む同社の姿に不信感も募っていた。当初の同社の事業計画によると、COCO塾は13年3月期に全国に80~90カ所、数年内に150カ所規模への拡大を目指していた。


ニチイ学館を英会話スクール事業に駆り立てたのは、業績の安定化には教育事業の再構築が不可欠との認識を強めていたことと、長期に安定した成長を遂げるには事業領域の拡大と経営基盤の強化が必要との判断があった。その意味でいえば、経営のリスク回避を狙って打ち出したのが英会話スクール事業への参入だった。

実際、これまで教育事業が主力としてきたホームヘルパー2級講座と医療事務講座の受講生数は、12年3月期にともに前期比で2桁台のマイナスとなり、教育事業は大きな減益に陥った。

ニチイ学館の商売熱心さは経営の厳しさが募るばかりとの強い危機感からである。レッスン料値上げの限界、受験生数の低下による収益収入ダウン……。現実に、2015年度は値上げを見送られる。


一方の支出の方は、企業規模が大きい分、人件費負担が重くのしかかってくる。従業員は、それが災いしてか愛社心が薄弱であるといわれる。同じ机を並べたとの同志的意識が薄く、勢い、会社に対する忠誠度が低い水準にある。

大手信販会社との提携で生徒対象に発行されたクレジットカード「ニチガクカード」は、そんな組織化を狙ったものである。企業規模に対する信用供与により、介護や英会話スクール内に設ける割引レッスなど幾多のメリットがある。だが、明らかにそっぽを向いている従業員に対して会社を意識させる効果を期待したものである。


「介護の教育に支障のない限り、収益を目的とした事業を行うことができる」

社長は、ニチイ学館の経営指針をこう規定している。


赤字体質にあったCOCO塾が、自校の経営安定化をはかるためビジネス感覚に目覚めたのは賛同されるべき話である。だが問題は、稼いだ資金を、在学する生徒に高い知的付加価値をつけ世の中に送り出すために、生かし切れるかなのだ。

ニチイ学館の経営安定はかなったものの、学舎の知的水準がアップしなければ介護教育機関としての本来の使命は達成されたことにはならない。